アトピー性皮膚炎は幼児期から小児期に見られる代表的な湿疹性の皮膚疾患です。遺伝的な素因が原因となって発症することが最近の研究で明らかにされてきました。特に喘息などのアレルギーを合併する患者さんでは母親からアレルギー素因が伝えられやすいことが明らかにされています。このようなアレルギーからの遺伝素因に加えて、アトピー性皮膚炎患者においては皮膚が乾燥しやすい、鮫肌、皮膚の感染症を生じやすいなどの皮膚を外界の刺激から防御する機能、いわゆる皮膚バリアー機能の低下が遺伝的に規定されていることも明らかにされてきました。いずれの因子がアトピー性皮膚炎の発症に重要かは患者さんそれぞれで異なり、また治療も当然異なってきます。免疫学的な観点からアトピー性皮膚炎の発症機序を見た場合、ダニやホコリ、微生物、食物など様々な抗原に対してIgE抗体の過剰産生がみられることがアトピー性皮膚炎の特徴とされています。
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アトピー性皮膚炎の治療は原則として以下のような治療方針により行っています。軽症例はスキンケアを主体とした外用療法とかゆみ止めを目的とした抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬内服療法を行い、ステロイド外用は必要に応じて5倍程度に薄めて使用し、びらん、紅斑や湿潤局面など中等度以上の湿疹病変に用います。抗生物質は原則的には使用しませんが、明らかな細菌感染(膿痂皮、膿疱)を認める場合には皮膚への移行性のよいものを短期間のみ使用します。

一般的なスキンケアは下記の点に注意して行います。
入浴法
夏期は汗のかきやすい頚部、腋窩、肘窩、膝下、臀部は石けんを用い、柔らかいタオルでていねいに汚れを落とすようにしますが、決してこすりすぎないよう注意します。汗をかけば可能な限りシャワーを行います。シャンプー、リンスは近年毎日行っている人が多く逆に手や頚部のバリアー機能を障害するので充分洗浄し、夏であれば水分を充分ふき取った後、保湿クリームなどを薄く湿布します。冬期には逆に皮膚の乾燥化が進むので、石けんの使用は極力制限し、関節部などに限定します。また皮膚は入浴後充分水分をふき取り、保湿軟膏や保湿オイルなどを外用します。皮膚の乾燥化の防止と汚れの洗浄という相矛盾した注意が必要なので高齢者や小児患者は家人が十分注意することが重要です。
外用の仕方
軟膏製剤は手の平に取り、体温で少し柔らかくしてからていねいに塗ります。決してすり込むのではなく、薄く皮膚面でのばすようにします。びらん、痂皮のあるときはガーゼで保護することも重要です。また保湿剤は皮膚が乾燥すれば1日に何度外用してもかまいません。ただ、1回に大量に外用しても意味がありません。
衣類の選択
皮膚刺激の少ない衣服を使用します。新しい衣類は一度洗濯を行い、充分洗剤を流したあとで使用します。冬期静電気が起こると、それが刺激になって皮膚炎の増悪がみられることがありますので注意してください。頚部などの皮膚炎が高度の場合、綿のマフラーなどで外的な刺激をさけることも重要です。オムツは吸湿性のよいものを頻回に交換します。綿のものは逆にむれて皮膚炎を悪化させることがあるので必要に応じて使い分けが必要です。
生活上の注意、掃除の方法
できれば床はフローリングなどの掃除がしやすい環境がいいでしょう。患者さん自身は掃除しないようにし、布団、カーテン、ぬいぐるみなどは適時洗濯をしてください。スキンケアはきめ細かく行うだけで多くの患者さんは軽快していきますが、このような治療を行っても皮膚炎の軽快が得られない症例はどこかに増悪因子や、原因の見落としがあることが多いものです。見落としやすいものとしまして、光線過敏、外用剤による接触皮膚炎、シャンプー・石けんなどの刺激性皮膚炎、過剰な発汗などがあげられます。
アトピー性皮膚炎と食事の関係
我が子がアトピー性皮膚炎というと、食べものが原因ではと心配する親御さんが多いものです。ひところ、小児科の医師を中心に除去食の必要性が多く説かれたことで、食べ物に関心を持つ人が増えたようです。
もし食べ物が原因だったら、血液中に入ったあと体(皮膚)に出てくるものですから、症状は全身にわたるはずです。しかし、症状が肘や膝の裏側、お尻の下側など、体の一部であれば、食べ物が原因と考えなくてもいいでしょう。
或いは、一年中同じ症状かどうかも判断の目安です。アレルゲンとしてよくいわれるのは、卵や牛乳など日常的に食べるものです。もしこれらが原因なら、季節に関係なく症状が出るでしょう。しかしアトピー性皮膚炎の患者さんの多くは、乾燥した冬場は症状が重く、夏は軽い傾向にあります。季節によって良くなったり悪くなったりする場合は、原因は食べ物ではなく、生活環境の中にあると考えられます。
食事制限の是非
以前、アトピー性皮膚炎の原因に食べ物が疑われて、妊婦に卵を食べさせないとか、小児に卵や大豆や乳製品を除いた食事をさせるという指導が盛んに行われた時期がありました。その結果、胎児が発育不全になったり、子どもが成長不良になるというトラブルがいくつも報告されました。小さい子どもは消化器官が未発達なので、卵や牛乳に反応することも多いのです。
乳児なら、離乳食を急ぎすぎないことです。幼児であれば、毎日同じものばかり食べないことです。コップに注いだ水が一定の量に達するとあふれ出るように、アレルギーは原因物質がある一定の量に達すると起こります。同一のものをたくさん食べると、アレルギーは起きやすくなります。種類を多くして、少しずつ食べることです。
アトピー性皮膚炎の食事の基本